(Google webサイトより借用、「神聖なるクルアーン」のアラビア文字)
イスラム教、アラビア語にとって根幹をなすものは唯一神「アッラー(フ)」から最後の預言者と言われるムハンマドに下された啓示、聖典「アル・クルアーン(Al Qur`an)」(略してクルアーン、日本語でコーラン)に他なりません。「クルアーン」は原型がカラアQara`aと言う「読む、唱える、暗誦する、大声で話す」という意味の動詞から派生した名詞で、直訳しますと「読誦(詠唱)すべきもの」と言う意味になります。
蛇足ですが、「クルアーン」読誦の大会も多く、大きなものではDubai International Holy Quran Award 国際大会が毎年ドバイで開催されています。今年で19回目。優勝賞金850万円。如何に決められた法則で上手く人に聞かせるかを競い合います。例えは悪いかもしれませんが、日本の民謡のど自慢大会とでも言えましょうか。
神から下された啓典の中で、旧約聖書(ユダヤ教)の「モーセ5書」「詩編」はヘブライ語、新約聖書(キリスト教)の「福音書」はギリシャ語、そして「クルアーン」はアラビア語で書かれており、新・旧約聖書の啓典を包括した形で「クルアーン」が成立したとされています。その為、「クルアーン」に登場する預言者の内20人が新・旧約聖書に登場する預言者(有名なモーセ、イエスを含む)と同じであるとの事です。ムハンマドは周囲に居た多くのユダヤ教徒から聖書の知識を得たと言われています。
「クルアーン」はムハンマドが住んで居たアラビア半島西側ヒジャーズ地方の古典アラビア語が基礎となっています。神が選択した、神自身の言葉がアラビア語であり、この原典を他言語に翻訳する事は原則禁じられています。他言語に訳されたものは飽く迄、解説書、注釈の位置付けとされています。日本語のコーランの本を目にされた方もおられるかと思います。
ムハンマドは非識字者であったと言われており、周りの人間が彼が天使ガブリエルを通して授かった神の啓示を皮、骨片等に書き取っていました。114の章(スーラ)よりなる「クルアーン」はムハンマドの死後、その内容の散逸を恐れた第一代カリフ(後継者)アブー・バクル(在任:632-34年)が記録の断片収集、又は信者からの聞き取りにより編纂を始め、第三代カリフ、ウスマーン(在任:644-56年)により現在の原型が作られた様です。その後、不完全なアラビア文字に改良を施し8世紀初に現在の「クルアーン」に近い物が出来上がったとの事です。
ところで、「クルアーン」写本に関する下記の発見がつい最近あったという記事を見つけましたので引用させて頂きます。
但し、本発見に就いては古いと言う歴史的な価値は認めるものの、イスラムの歴史資料及び「クルアーン」の断片の一部として評価するかは1.誰が書いた物か?2.この写本は現在ある原本と一致しているか、が明らかになるまではイスラムの資料としての価値判断は出来ない、とのイスラム学者のコメントが掲載されていました。(Web イスラム専門サイトIlm feedより引用)
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【産経ニュースより記事、写真とも引用】 2015.7.23
世界最古のコーランを英・バーミンガム大の図書館で発見
英中部のバーミンガム大は22日、世界で最も古いイスラム教の聖典コーランの写本が同大図書館の保管庫から発見されたと発表した。見つかったのは、2枚の羊皮紙に古いアラビア語で書かれたコーランの一部の章。同大の研究者が、図書館の新しい年代の史料の中に古い羊皮紙が紛れ込んでいるのを見つけ、炭素の放射性同位体を使った年代測定を行ったところ、95%以上の確率で、568~645年に書かれたものであることが判明した。 イスラム教の預言者ムハンマドが生きていたのは570~632年ごろとされる。預言者と面識がある人物が書き写した可能性もあるという。また、コーランは第3代カリフ(預言者の後継者)ウスマーンの命令で650年ごろ初めて1冊の本として編纂(へんさん)されたと伝えられており、それより古い写本となる。
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「クルアーン」が出来上がって1,400年近くを経た現在の社会で「クルアーン」に基づいたイスラム法のみを用いて国家を存続させて行く事には無理があり、各国とも西洋的近代法、現代法を取り入れる事により、イスラム法との調和の中で法整備を実施してきた国が増えた事は時代の趨勢かと思われます。政教分離、三権分立とは言い難い部分もありますが、その国々にあった手法で国の平和と国民の幸福を考えていると思います。昨今のイスラム原理主義グループやIS(Islamic State)はこれを真っ向から否定するものでアラブ、アフリカ地域での紛争は複雑さを増しています。
アラビア半島から生まれたアラビア語は「クルアーン」を通じて中東、北アフリカに広がり現在27の国、地域で公用語として使われております。国連憲章が規定する国連の公用語は中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語の5カ国語でしたが、1973年、アラビア語が国連発足以来初めて公用語に追加されました。世界の使用人口は現在約2億5千万人の模様。
断食月(ラマダン)のイードも終わり、次の大きなイスラムの行事、巡礼月(ハッジ)の犠牲祭(イード・ル・アドハー)は9月22日頃から始まる予定です。
(Google webサイトより借用、コーランの写真)