巡礼(ハッジ)と大祭礼
(カアバ神殿) (掲載写真及びデザインは各種Webサイトより引用)
イスラム暦の12月、ハッジ(巡礼)月「ズー・アル・ヒッジャ」が9月15日から始まりました。(サウジ政府の正式発表が14日にありました。)以前ご説明した通り「巡礼」はイスラム教徒にとって五つの「行」の一つで宗教の実践として行うべきものであります。メッカへの「巡礼」は巡礼月の7日から10日にかけて行われる行事であり、その儀式が終わる10日からイスラムの大祭礼(Eid al-kabir)「犠牲祭」(Eid al-Adha)が始まります。2015年は9月24日から始まる旨、これもサウジ政府が承認致しました。各国共に4-5日間ほどが祝日となります。
9月24日以降、ムスリムの方にお会いする機会があれば、「イード・ムバーラク」又は「イード・アル・アドハー・ムバーラク」(犠牲祭おめでとう)と挨拶されては如何でしょうか。
一生の間に一度メッカ巡礼をと思いつつ、その夢が果たせず終わる人も多い事でしょう。
コーランの中には巡礼に関し、以下の記述があります。
第2章「雌牛の章」
196節「神のために巡礼と参詣の務めを果たせ。」
第3章「イムラーン家の章」
96節「人々のために設けられた最初の聖殿はバッカ(メッカ)にあり、それは、祝福され、いっさいの生き物の導きとして設けられたものである。」
97節「その中には、アブラハムが足をとどめたところをはじめ明白なみしるしがある。そこにはいればだれでも、絶対安全が保証される。この聖殿への巡礼は、そこに旅する余裕のあるかぎり、人々にとって神への義務である。(以下省略)」
(中央公論「世界の名著」コーランより引用)
メッカへの道には途中から高速道路の料金所に似た様な施設があり、そこから中へは異教徒は入れません。正に、この聖域は宗派、国、人種が違ってもイスラム教徒のみが共有出来るイスラム運命共同体の場所と言えます。
数百万人が集うこの行事はサウジアラビア政府にとっても治安の維持が大変で、毎年混雑の為に圧死者が出る悲劇も起こっています。筆者も80年代前半、サウジアラビアに駐在していましたが、この季節は巡礼者の拠点となるメッカに近いジェッダを含め、西海岸方面への出張は殆ど諦めざるを得ませんでした。
大祭を終え、巡礼月(ヒジュラ暦12月)が10月14日終わり、10月15日にヒジュラ暦は1437年の元旦を迎えます。
(イード・アル・アドハー・アル・ムバーラク-祝福される犠牲祭-のアラビア語)
【追記】カアバ神殿のモスク拡張工事で大型クレーン崩壊 (Gulf Newsより引用)9.13
9月11日(金)にメッカ、カアバ神殿のグランド・モスク拡張工事に使用されていた大型クレーンが倒れ、死者107名、重軽傷者238名の惨事が発生致しました。Salman国王も翌12日、原因追求指示と患者へのお見舞いの為メッカを訪問しました。オマーン人2名が負傷し病院に搬送されましたが、軽傷で済んだようです。9月21日から始まる巡礼の一連の行事は現状予定通り執り行われる模様です。
この工事は2.2百万人の巡礼者を一度に収容出来るグランド・モスクの拡張工事の中で発生致しました。原因は強風と言う説がありますが、まだ解明されていません。
メッカ宗教警察の元長官は「この事故は神がお試しになったもの。我々はこの現実を受け入れなければならない。」とのコメントを伝えています。また、現場近くに居たエジプト人巡礼者は「この聖なる瞬間、聖なる場所で、事故が起き、その場で死ぬ事が出来るなら私にとっては本望だ。」との言葉を記者に語ったと記載されています。この工事を請け負っているSaudi Binladin Groupのエンジニアは「クレーンの設置自体に技術的問題は無く、これは神のなせる業である。」と発言しています。
(Gulf News Webに掲載された事故現場の様子)
私としても2-3百万が集う巡礼行事が滞り無く終わる事を祈るばかりです。
以上