オマーンから帰国間もない講師による講演会が開催されました
2022年度第3回目の講演会が11月26日(土)にオンラインにて開催されました。
講師は、現在京都大学修士課程で言語学を研究されている村岡静樹さんで、演題は「オマーンつまみ食い講座~暮らしと言葉~」です。
村岡さんは、クウェート政府奨学金留学生を経て、京都大学文学部をご卒業後、在オマーン日本国大使館に専門調査員として勤務され、今年の10月に3年ぶりに帰国されたばかりです。
冒頭に、ご専門の言語学について述べられました。私たちの日々の何気ないことばに奥深い仕組みが潜んでいること、言語・方言の区分一つとっても一筋縄ではいかない難しさがあることを説明されました。続いて、オマーンと近隣諸国の様子を、共通性と多様性に注目しながら、最新の写真とともに伝えていただきました。
講演のメインでは、架空のオマーン人キャラクターの一日を追う形で、日常の「ことば」を切り口に、オマーン人の暮らしと社会、文化の諸相を、かわいらしいイラストを添えて楽しくレクチャーしていただきました。
「クンマ」(円筒帽)「ハンジャル」(短刀)をはじめとする民族衣装にまつわる表現や「おはよう」「ありがとう」などの挨拶、また子どもがものを選ぶときの「ど・れ・に・し・よ・う・か・な……」などについては、現地で生活された研究者ならではの生き生きとした解説をうかがうことができ、聴衆一同オマーンへの理解が深まりました。
「マー・カッサルタ!」というお礼のことばは、文字どおりには「あなたは短くしなかった、おろそかにしなかった」という意味なのですね。今度オマーンの友人に使ってみたいと思います。
「シーシャ」(水たばこ)という単語を「ガソリンスタンド」という意味で使ったり(車がガソリンを吸っているということのようです)、「大学の新入生」を「おのぼりさん」とからかったり(大学構内できょろきょろしている様子をさすそうです)するなど、こちらの想像力を刺激するような比喩表現もたくさん飛び出しました。
直接目で見ることのできない、オマーン人の精神世界にも近づくことができました。例えば、天気予報の末尾に「神はもっともよく知り給う」と書かれていたり、喧嘩で相手をののしる表現にすら信仰が垣間見られたりするように、宗教が非常に身近なもののようです。あわせて、風刺画や街角の写真を題材に、教育観、偉人観、時事問題に対する世論を紹介していただき、改めてオマーン人の目に世界がどう映っているのかについて思いをめぐらせる貴重な機会となりました。
ところでオマーンの男性が「内務省」といえば奥様のことを指すそうです。日本の「大蔵省」よりも力強そうな響きがあり、おもしろく感じました。質疑応答では、結婚相手との出会い方や、オマーン人が日本人や中国人、欧米人をどのように見ているのかなどの質問もあり、あっという間に講演会は終了してしまいました。
参加者の方々からは、「また続きが聞きたい」「言語学者の観点からのコメントやちょっと辛口の語り口が面白くてとても良かった」「おかげでまたオマーンが近づいたような気がしました」などなど多くのコメントをいただきました。