講演会「銅鉱床探査とそれを通じて知ったオマーンという国」が開催されました
7月1日、本年2回目の講演会「私が行った銅鉱床探査とそれを通じて知ったオマーンという国」がオンラインで開催されました。講師は地質の専門家であり、世界各地で鉱物資源の探査をされてきた柴田芳彰さんです。オマーンの銅鉱床がテーマとあり現地マスカットからも複数のご参加をいただき50数名が参加されました。
当クラブの理事であり三菱マテリアルテクノ㈱でご活躍になった柴田さんは、主としてJOGMEC/JICAの資源探査や鉱業関係プロジェクト(東南アジア、モンゴル、アルバニア、南米、中東)に関わられてきましたが、オマーンでは1980年~2001年の間、3回にわたるマンガン鉱床や銅鉱床の探査プロジェクトに深く関わられました。
ご講演では柴田さんが1990年代にオマーンで探査・発見された銅鉱床が最近になってオマーン企業により開発が開始されているとのニュースを交え、優れた電気導性等の銅の特性や合金としての需要など従来の重要性に加え、近年の自動車のE V化や車内の電装品など、ますます増加する銅の重要性を説明されました。そして地表からは見えない地下資源、特に銅の鉱床はどのように探査・発見するのかを中心に解説されました。
オマーン北部は紀元前3000年の昔からマガンと呼ばれており銅の産地として知られていたとか。
ソハールやヤンクルでは銅製錬の跡や製錬後にできるカラミ(slug)を今でも見ることができるそうです。
天然資源の豊富なオマーンの中でも銅資源はオマーン山脈沿いにその存在が知られており、その探査は地質調査に始まり、電気探査→電磁探査を経てボーリング掘削へと進行するとのこと。
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特に電気・電磁探査では電線を張ったり、穴を掘ってその穴に塩水を投入することが必要で、数十人の人夫を雇って、毎日炎天下作業を進めたそうです。
その間1ヶ所に約3ヶ月家を借りて滞在したそうですが、翌日すぐに作業に取り掛かれるよう準備し設置しておいた電線が夜間に盗まれたことや、コックとして雇ったインド人が前日までトラックの運転手だった人物で、「お前、料理もできるのか」と聞くと「できる、いろんな種類の料理ができる」との返事で、「どんな料理か」と聞くと「チキンカレー、ビーフカレー、〇〇カレー、✖️✖️カレー・・・」と3ヶ月毎日カレーだったこともあるそうです。人里離れた荒涼とした地域では、気候や慣習の違いのみならず、食事の点でもご当人しか分からないご苦労が多々おありだったことでしょう。それでも漆黒の闇の中で遭遇した満天の星空はとてつもなく美しく、言葉には表せない今までに感じたことのない不思議さと畏敬の念を抱かれたそうです。
最後に最近二酸化炭素の鉱物固定化として注目されているオマーンのオフィオライトに触れられました。オフィオライトとは『海洋プレートが大陸プレートに衝突して乗り上げた断片』でオマーンには世界で最も広く分布しているそうです。柴田さんはオフィオライトのスライドを見せながら「地質研究者にはよだれの出そうな場所なのです」と解説されました。
素人にはなかなか触れることのない分かりにくい資源探査や掘削など、専門的な内容をわかりやすくご説明いただき、オマーンの地質の特性を再認識させられたご講演でした。