オマーン大使館にて講演会「オマーンとイラン」開催
2024年7月3日水曜日、14時よりオマーン大使館において、駐オマーン・スルタン国並びに駐イラン・イスラム共和国特命全権大使を務められた齊藤貢様による講演会「オマーンとイラン」が開催された。約60名の聴講者が集まり、中東地域に注目が集まる今、その関心の高さを改めて示すこととなった。
齊藤大使の話は、古代からオマーンとイランがペルシャ湾(アラビア湾)を挟んだ隣国として戦火を交えつつも交流が盛んで、イラン・イスラム革命後、他のアラブ諸国がイランを警戒、対立する中でもオマーンはその友好関係を維持してきた事実から始まった。
2002年に発覚したイラン核開発問題以降も、オマーンを介してイランと米国の交渉は行われており、記憶に新しい2023年のイランとサウジアラビア、UAEの関係改善、イランに拘束された外国人開放交渉もオマーンが仲介したと言われており、このことがオマーンの国際的地位を高めてきた、と言う。
一方、イランと米国の対立は、米国が後ろ盾となったシャー(王)独裁体制がイラン・イスラム革命で倒されて以降、米大使館占拠人質事件をはじめ大変に根深いものがある。地域の覇者としてイスラム革命を輸出したいイランと民主主義を唱える米国が対立する中、2023年10月ハマスによるイスラエルへの越境攻撃をきっかけに、イスラエルによるガザ侵攻が始まり、ハマスを支援してきたイランとイスラエルの間に緊張が高まっている。その後もイランの代理勢力とイスラエルの衝突など「闇の戦争」が続いたが、イスラエル軍機(イスラエルは認めていないが)による在シリア・イラン大使館への攻撃により「闇の戦争」の不文律がついに破られたと指摘された。
さらに講演の終盤、話題はイラン最高指導者ハメネイ師の後継者が、故ライシ大統領の事故死により白紙に戻ったことと共に、7月6日のイラン大統領選・決戦投票に移った。齊藤大使は「保守派が油断した点と、改革派ペゼシュキアン氏が現政権への不満の受け皿となった点で票が割れ、決選投票に持ち越した」と分析し、「閉塞感をもつ有権者が投票ボイコットをせず、投票率が上がれば改革派が勝つ可能性もある」と付け加えられた。
講演会直後の7月7日未明、イラン大統領選・決戦投票の結果が出た。ペゼシュキアン氏が、改革派としては19年ぶりに大統領に当選したのだ。投票率は49.8%。過去最低だった第1回投票の40%を大きく上回り、齊藤大使の予想通りの結果となった。まさに機を得た講演会だったと言えよう。