イベント情報
講演会「日本での私の物語」が開催されました
2月27日、第4回講演会がオマーン大使館で開催されました。講師は、オマーン人女性留学生として早稲田大学大学院を修了後、清水建設に勤務しているバルキス・アル・ハルシーさんです。ジョーンズ会長ご挨拶ののち、バルキスさんは「日本での私の物語」と題して日本語で発表されました。IMG_0550 (クリックするとビデオがご覧いただけます)
オマーンの大家族で生まれ育ったバルキスさんは幼い頃から好奇心旺盛、世界を旅することを夢見る少女でした。保守的な家族を説得して初めて海外に出たのはアイルランドで、彼女が17歳のとき。3年間ホストファミリーと暮らすなかで英語が上達し、大学では土木工学を専攻しました。その後、オマーンに帰国したバルキスさんは建設現場で働きはじめます。暑さ厳しいオマーンでの就労は大変でしたが、職場が変わりオフィス勤務となりました。その通勤途中にある日本大使館の前を車で通り過ぎながら、次は日本に行くという決意を固めていったそうです。
行動力のあるバルキスさんは奨学金を獲得、日本行きの切符を手にします。コロナ禍を乗り越え入国し、早稲田大学の土木環境研究室に所属する唯一の女子学生でした。ゼミではコンクリート材料の実験など研究を進めつつ、学外ではアルバイトや旅行をして学生生活を楽しみました。修了後は博士課程に進む道もありましたが、就職フェアに出かけ、清水建設のセミナーに興味を持ち面接に進みます。半年の選考期間と三度の面接を経てようやく採用連絡がきたときは、本当にうれしかったそうです。
入社後は満員電車での通勤や同僚たちとの飲みニュケーションなど、オマーンでは考えられない日本独特の就労事情に戸惑いながらも、徐々に慣れていきました。職場では国内外の複数のプロジェクトを担当、建設現場のスケジュール管理をはじめ入札や資材調達なども幅広く経験しました。日本はデジタル化が進んでおらず、書類の仕事が多いことにも苦労します。紙が溢れているのは職場だけでなく、自宅の郵便受けにジャンクメールが大量に入るのにも驚きました。
東京での仕事と生活に充実感を覚えつつも、バルキスさんは今春退職しご家族の待つオマーンに戻ります。次の仕事は鉱山会社のシニアプランニングエンジニアで、日本を旅立つ日は間近に迫っています。後ろ髪ひかれる思いで日本を離れるバルキスさんの経験談を、来場者一同興味深く聞き入りました。そして、母国での新たな挑戦と活躍を願い会場から大きな拍手が沸き起こりました。
講演会の質疑に続いて、日本オマーンクラブ15周年記念として行われたオマーン旅行の報告が行われました。2月初旬のツアーには10名の参加者が集い、旅程の一部ではバルキスさんのご実家への訪問も実現したそうです。素敵な邸宅やご家族総出の歓待シーンもスクリーンに映し出されました。ツアー一行を率いた柴田理事より、訪問交流のご縁をいただいたバルキスさんのご家族へ深い感謝の意が表されました。今回は短編でしたが、ツアー報告は4月の総会開催時に予定されています。日本との友好関係を深めてくださったバルキスさんの門出を、日本オマーンクラブの講演会という形で分かち合えたことを喜び、最後は万雷の拍手で祝福しながら閉幕しました。
大使館祝賀感謝会
2025年1月21日(火)、広尾にあるオマーン大使館にて「大使館祝賀感謝会」が開催されました。ブサイディ大使ご夫妻をはじめ大使館の方々のご臨席のもと、37名の会員が一堂に会しました。
祝賀感謝会は郡司みさお理事の司会で始まりました。祝賀感謝会に先立ち遠藤晴男名誉会長が挨拶され、前月亡くなられた大使館員の小泉アシュラフ博士への黙祷が捧げられました。その後、ジョーンズ享子会長が開会の挨拶をされ、日本オマーンクラブの歩みや翌月に実施されるオマーンツアーについて話されました。引き続いてモハメッド・アル・ブサイディ大使のご挨拶を頂いた後に、大使館の方々に、日頃の感謝の意を表して贈り物が手渡されました。
お楽しみの昼食は、大使夫人アイシャさん選り抜きのアラブ料理が並ぶバイキング方式でした。メイン料理からスイーツまで、なかなか日本ではいただく機会のないご馳走ばかりで、どれも美味しく、みなさん堪能されていました。そして、旧知の会員同士はもちろん、新しい参加者や大使館員の方々もともに、さまざまな話題で大いに盛り上がりました。また、大使は各テーブルを回り、会員たちと直接言葉を交わしてもてなしてくださいました。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、名残惜しくも終了の時刻となりました。岡部聰理事が音頭を取られ、
一本締めで閉会しました。
今回も親睦を深めることができ、大変有意義な会となりました。大使ご夫妻をはじめ大使館の方々、準備等をしてくださった幹事の方々、そして、お集りいただいた会員のみなさまに感謝申し上げます。
(小画像はクリックすると拡大します。)
新年のご挨拶
日本オマーン学生交流会2024が開催されました
11月16日(土)、東京・中野区の成願寺にて日本・オマーン学生交流会が開催されました。両国の若い世代の相互理解と育成を目的に始まったこのプログラムは、成願寺さんのご好意で交流会会場と宿坊を提供していただき、毎年境内での合宿を含む二日間行われています。
今年はオマーン人留学生6人と日本人参加者12人、あわせて18人が集まり、ジョーンズ会長の挨拶後、ディスカッションで幕を開けました。参加者たちは二つのグループに分かれて自己紹介を行った後、オマーンと日本の文化の違いや最近の社会情勢で関心があることなどを一人ずつ発表し、活発な意見交換が行われました。
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およそ1時間に及ぶディスカッションでの内容を発表した後は、同じ会場で書道体験を実施。日本人学生が留学生に筆の持ち方や墨の付け方、そして半紙の使い方などを説明し、留学生たちは黒板に書かれた「日本」や「オマーン」という言葉を見ながら半紙に筆を滑らせていきました。初めて毛筆を手にとったオマーン人からは、「力の加減が難しかったが、自分の名前をカタカナや漢字で書けて嬉しい」との声があがり、達成感あふれる様子がひしひしと伝わってきました。
その後の夕食では、お寺から徒歩15分ほどのハラールレストランへ。異国情緒あふれる雰囲気の中、スパイスの聞いた羊肉料理などを囲みながら食事を楽しみ交流を深めました。その晩の成願寺での宿泊は、留学生には勿論のことお世話係の日本人学生にとっても稀な体験でした。
二日目は国会議事堂訪問。中野坂上から赤坂見附へと地下鉄で移動し、荷物を駅のコインロッカーへ預けてから国会議事堂まで徒歩で10分ほど。現地でもう一人留学生が加わり、この訪問を手配してくださった石川参議院議員の奥様や秘書の方も参加されました。偶然にもこの日は「議場公開」の特別日にあたり、通常は上から眺めるだけの天皇陛下のお席、議長席や大臣席、速記者席なども間近に見学できました。議事堂の資材は3点を除いて全て国産を基本に建築されたそうで、正面入り口付近には各都道府県の代表的な木が植えられていました。議事堂内部と外部の見学で歩いた歩数はなんと9000歩だったとか。その後皆で疲れた脚を休めランチと会話を楽しみました。
天候にも恵まれたこの日は遠方から参加した留学生達も帰路の途につき、プログラムは終了しました。
以下は9月に来日したばかりの大学院生Maliha さんの交流会参加の感想です。 (翻訳はこちら)
I would like to express my heartfelt gratitude to Ms. Kyoko Jones, the president of the Japan Oman Club, for her kind invitation and for providing such a wonderful opportunity. It was a great pleasure to meet all the organizers and participants of the Japan Oman Club cultural exchange meeting.
Over the past two amazing days, I had the chance to connect with many Japanese students who share a strong interest in Arab culture, particularly in Oman. We had enriching discussions and exchanged experiences about both Omani and Japanese cultures. Additionally, I tried Japanese calligraphy, which includes kanji, hiragana, and katakana. This was another wonderful experience that I thoroughly enjoyed.
Additionally, I had the privilege of meeting Japanese students from the University of Tokyo for Foreign Languages who had previously been exchange students at Sultan Qaboos University. I was deeply impressed by their fluency in Arabic and their dedication to learning the language. Their efforts have inspired me to start learning Japanese as well. The first day concluded with a dinner and an overnight stay at Joganji Temple, a unique and memorable experience that I would love to repeat in the future.
On the second day, we had an interesting opportunity to visit the National Diet Building, made possible by the kind assistance of Mr. Hirotaka Ishikawa, a member of the House of Councillors and of our Club. This entire experience was truly enriching and amazing, thanks to the incredible efforts of everyone who organized and supported the event. I sincerely thank you all and deeply appreciate your hard work.
Maliha (Kyoto University)
講演会「オマーンの地質探訪」が開催されました
10月15日、2024年第3回講演会がオマーン大使館で開催されました。講演は、小笠原正雄博士による「オマーンの地質探訪 オマーンの自然景観を造った地質的背景」です。
小笠原博士は、国立研究開発法人産業技術総合研究所地質調査総合センターで、長年、地質と鉱物資源に関する研究をされた方で、2012年の日本・オマーン国交樹立40周年記念行事として、産業技術総合研究所地質標本館での特別展の企画も務められました。
小笠原博士は、地球の成り立ち、大陸や海を形造った地殻変動、さらにアラビア半島の形成から、オマーンに見られる地質的な特徴を解説されて、オマーンの景観が造られた背景、そしてそれが地質学的にいかに貴重なものであるかを、地球の歴史をさかのぼり、詳しく解説してくださいました。
プレートテクトニクス(理論)に拠ると、固い地殻は流動する上部マントルに載って移動するので、それらを併せてプレートとして扱うそうです。現代では15程度のプレートに分かれているそうですが、46億年前に地球ができて以来離合集散を繰り返しているそうです。現在のアフリカ大陸、南アメリカ大陸、インド亜大陸、南極大陸、オーストラリア大陸、アラビア半島、マダガスカル島を含んだ巨大な大陸であったゴンドワナ大陸という超大陸が、今から2億年ほど前から分裂を始め、6500万年前にはアフリカ、南米、インド、オーストラリアの各プレートが分かれたと考えられています。そして、約4000万年前にアラビアプレートが形成され、アラビア半島とアフリカ大陸が分離したのだそうです。
オマーンの地質は、その成り立ちから7つのユニットに分かれるそうです。これらの地層をイメージでとらえると、古い本が下にあり、その上に新しい本が積み重ねられているのですが、「オフィオライト」層では本棚が倒れて、一部の本が上に乗っているような状態に近いそうです。
このオマーンに分布する「オフィオライト(ophiolite)」は、1億年前(白亜紀後期)のマントル由来の岩石からなるもので、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際、海洋プレートの一部が大陸プレートに乗り上げて、地表面に現れてしまった部分と考えられています。海洋プレートは、数種類の岩石が層になっていて、深海の堆積物からなる堆積岩、マグマが冷えて固まってできる玄武岩、マントルの上部にある橄欖岩などからできています。このオフィオライトはマスカット近郊の海岸線に沿って約550kmにわたって露出しており、これは世界最大規模となるそうです。ここでは海底〜上部マントルまでの海洋プレートの断面、岩石の組み合わせと層構造が観察できるそうで、世界中の地質学者がオマーンを訪問するそうです。
オフィオライト中の特徴的な景観の一つに枕状溶岩があります。これは、玄武岩質のマグマが海底に噴出し、玄武岩溶岩が流れ、その上に新たな玄武岩溶岩が重なって、枕のような形になるため「枕状溶岩」と言われています。オマーンではたいへん保存状態の良い枕状溶岩を見ることができるそうです。
橄欖岩が分布するところは、ドライな環境のため植生がなく、更に岩石の風化が進まないため、人によっては「火星のような地形」と表現されるそうです。なお、橄欖岩は、二酸化炭素の吸収岩石として脱炭素ビジネスの事業対象として近年大きな注目を集めているそうです。
また、石灰岩がオフィオライトを覆って分布している場所では、素晴らしい景観が見られるそうで、マスカットの東側にある海岸は石灰岩の景勝地となっており、小笠原博士は良くここを訪れては、日没までいらっしゃったそうです。
- 質疑応答
最後に、私達の足元・地底はまだまだ未解明で、多くの神秘に包まれています。地球の中のマントルにある橄欖岩は、地球で最も多く存在している石にも関わらず、地下深くにあるため、私達はほとんど見る事が叶いません。オマーンにあるオフィオライトは、地球の深部を直接見たり触ったりできる貴重な場所だそうです。
筆者は、オマーンを訪れた時にはオフィオライトを見渡して、心静かに地球の成り立ちに思いを馳せてみたいと思いました。
講演後は大使館のご厚意で出されたコーヒーとデーツで、小笠原博士を囲んでの懇親会へと続きました。